ポリリズム的生活様式なかのポッケ
おしどり夫婦の協奏曲的リノベ暮らし
道沿いに一際目立つ白亜の建物と桜の巨木。ここが中野夫婦の新たに奏でる暮らしの場です。
もともとこの建物の裏手に、親夫婦に息子家族と4世帯で暮らしていました。
忙しい日々の中で大家族の日常は、楽しくも慌ただしく、長年の生活の中で物も増え手狭に。
そんな時に目をつけたのが、空き家になっていた隣地でした。
ブルータルな鉄筋コンクリートの2階建。道にせり出した大きな桜は、建物の歴史を感じられ、春には満開の花を咲か
せます。
裏手には木造の離れもあり、庭を挟んで元々の住まいと繋がります。
この土地を手に入れ、家族の暮らしの場を拡張し、ご夫婦ための終の住処をつくることにしました。
本やアート、共通する趣味をもちながらも、それぞれまったく異なる感性を持っているお2人。
大量の蔵書に、漫画、アート、鉄道、お酒、何より無類のドラえもん好き。遊び心満載のご主人。
一方奥さんは、やっぱり機能性や日々のお手入れが重要。
住まいに求めるものもそれぞれに異なれば、大正浪漫、サブカル、NY、ブルックリン。出てくるキーワードもとにかく
多様。
似ているようで異なる、異なるようでどこか響き合う。
公私共に長年連れ添ったご夫婦は阿吽の呼吸で、打ち合わせはいつも夫婦漫才のようでした。
そんな2人の共鳴しあう成熟したデザインがポイントとなりました。
なかの流、ティファニーブルーのどこでもドア
真っ白にお色直しした建物に印象的なティファニーブルーのどこでもドア。
玄関はどこでもドアにしたいという旦那様の強い拘りにより、既存の玄関扉を活用し、特別にリメイクしました。
ティファニーブルーは奥さんと娘さんのセレクト。
家族のこだわりを掛け合わせたオンリーワンのどこでもドアは、建物のシンボル。
開いた先にどんな異空間がまっているのかワクワクさせてくれます。
ゲストのための小さなギャラリー
玄関扉を開けるとアールの壁に囲まれた、最小限のエントランススペース。
家族は元々の住まいと行き来しやすい裏口を利用するため、ここには潔いほど何もなく、正面に置かれるアートにスポ
ットライト が当たります。
奥に続く暮らしの場への前室的な意味と共に、温熱環境を守る機能も持っています。
まるでカレイドスコープ。フレーム ごとにシーンの変わる空間
壁式の鉄筋コンクリート造は大きな梁や間仕切り壁が構造体となっており、もともと昭和建築らしい小割りの間取りで
した。
コストパフォーマンスをみながら間取りや、断熱プランを考えていきました。
メインのLDK部分は、必要な壁以外は一度スケルトンに戻し、床下までしっかり断熱工事を行いました。
床の高さも変更し、天井高を確保。あらわになった鉄筋コンクリートの駆体と、もともとの建物のもつ昭和な雰囲気の
コントラストが絶妙です。
一体的になったLDKは、残された間仕切り壁や梁を逆手に取りデザイン。フレームに見立て、それぞれに夫婦の拘りを
詰め込んだテーマを持たせていきました。
緩やかに繋がりながらも、シーンごとにガラリと印象が変わります。
時代を繋ぐアンバー色の光
Rの間仕切り壁の上部に使用している、アンバー色のガラスブロック は、もともと玄関に嵌め込まれていたものでし
た。
間接照明を埋め込み、リビングからいつでも当時のアンバーな光を楽しめるようにデザインしました。
今夜も夫婦のために開くバーカウンター
東の奥に位置するキッチンは、元々あった障子を生かして和モダンな空間に。
春には、障子を開けると目の前にライトアップされた桜を臨めます。
2型に造作したキッチンは、カウンタースタイル。
忙しい朝は、気持ちよい朝日の中で手早く朝ごはん。
夜には落ち着いた照明の中で、バーカウンターに。
美味しいあてとお酒、酒の肴には、ご夫婦のエスプリのきいた漫談。ぜひお呼ばれしたいものです。
リビングとキッチンをつなぐダイニングの空間。
掃き出しの窓からは裏庭に出ることができ、奥には息子家族の居住する建物があります。
時には多世代で食卓を囲み、お庭でBBQすることも。
キッチンとダイニングは繋げれば一体的に使用することも可能。
様々なシーンにフレキシブルに使用できます。
アール の開口の奥は闇!?こちらもご主人の遊びころ。建具に世界一黒いといわれている塗料を塗っている。
収納力抜群、夫婦のウォークスルークローゼット
もちろん機能性や収納も忘れていません。
家族がメインで利用する裏口から入ってすぐに、収納力抜群の夫婦のウォークスルークローゼットを設置しました。
この場所はLDKや個室、水回りを繋ぐ暮らしのコアな位置にあり、散らかりにくく、片付けしやすい動線となっていま
す。
隠し扉の向こうに拡がる夢の部屋
廊下の壁にある本棚と思いきや、本棚をひくとびっくり。奥には何万冊とあるご主人の蔵書が置かれた、夢のような空
間に繋がります。
ドラえもんをこよなく愛するご主人は、のび太くんの部屋の襖を再現し、もちろん押し入れの中は寝床になっていま
す。
本棚の一部には、ドラえもんが壁をぶち壊した設定の実物大のドラえもん型の穴。奥にはご夫婦の寝室が続きます。
この部屋にいるとなかなか寝室には辿り着けそうもありません。時間を忘れて夜更かししてしまいそうです。
まだまだ夢が広がる3次元なかのポッケ。これからどんな風にこの空間が熟成されていくかが楽しみです。
OUTLINE
PJ title | なかのポッケ |
---|---|
Place | 香川県宇多津町 |
Building type | 個人邸 | 鉄筋コンクリート造二階建 | 延床面積149.78㎡ |
Complete | 2024.03 |
Director | 平宅正人 |
Designer | 辻ひとみ |
Construction | 山口工務店 |
Photo | - |