人と暮らしの循環拠点くらしの不動産・九十九道具店
町と暮らしと人を循環させる
新しい不動産屋のカタチ
香川県三豊市。地域の暮らしを支える生活道路が交わる角地に、一軒の古民家があります。
かつては八百屋として、地域の人々の日常を支えてきた場所。
スーパーや生活に必要な施設にも近く、人や車の往来が絶えないこの場所は、信号待ちの車からも自然と目に入る、まちの中でも印象的な一角です。
この古民家を改修し、不動産会社の事務所機能と、古道具を扱う店舗「九十九道具店」として、新たな役割を与えるプロジェクトが始まりました。
しわく堂では、設計と監修を担っています
創業 100 年の企業から生まれる新しい不動産のかたち
このプロジェクトの背景には、香川県三豊市で⾧く地域とともに歩んできた喜田建材グループの存在があります。
建材をはじめ、多様な事業を展開してきたグループのなかで、不動産事業を分社化。
新たに株式会社八百万として、地域に根ざした不動産事業「くらしの不動産」を展開していくタイミングでした。
単に「物件を売る・貸す」だけではなく、地域にある建物や土地と向き合い、人と繋ぐ。
これからの暮らしや、まちの可能性を一緒につくっていく。
九十九道具店はそんな「くらしの不動産」のコンセプトショップです。
暮らしを循環させる古道具店
なぜ、不動産屋が古道具店をするのでしょうか?
くらしの不動産では空き家再生も手掛けています。
空き家や古い建物を扱うなかには、そこに残された家具や建具、道具など、まだ使うことのできる多くのものがあります。
スクラップビルド、大量消費のなかで、建物を新しくするのではなく、リノベーションすることと同様に、
空き家に捨てられたゴミもレスキューし、再生する。
そして現代に合わせた価値をつけて販売することで、ゴミを減らし循環がおきる地域へ。
不動産を「流通させる」だけではなく、地域にあるものを再発見し、新しい価値を与えながら「循環」させていく。
九十九道具店は、そんな不動産事業の考え方を、まちにひらいた形でもあります。
通り過ぎる日常に「ひっかかり」をつくる
もともと角地の八百屋だった建物は道路に向かって大きな開口が特徴でした。
香川の伝統的なつくりをしている八尾の家。
外観はほとんど変わることなく、痛んでいた壁面は地域に馴染む焼杉を張り、開口をそのまま生かしています。
スーパーへ向かう、仕事へ向かう、こどもの送り迎えをする
そんな何気ない日常の車窓から、
「ふと目に留まる」「なんだろう」と気になるひっかかりをつくります。
また、この場所は、打ち合わせだけでなくゲストハウスのフロント機能や、ショップなど窓口としての役割を担っている喜田建材グループの本社とも隣接しており、それぞれの事業が独立しながらも、人や情報、地域との接点がゆるやかにつながっています。
通りに面した角地という立地を活かし、この場所がさらにまちに「見える」場所になりました。
古道具を眺めに来る人。
空き家について相談したい人。
地域の情報を探している人。
さまざまな入口から人が訪れ、そこから新しいつながりが生まれていきます。
余白を残して繕う
今回の改修で目指したのは、古民家をまったく新しい建物へと変えることではありませんでした。
⾧い時間を経てきた建物の持つ表情を残しながら、傷んだ部分を直し、必要な部分に手を入れる。
「つくり変える」のではなく、「繕う」。
新しいものを加えすぎず、この建物がこれからも⾧く使い続けられる状態へと整えていきました。
古道具を扱う場所だからこそ、空間そのものにも、ものを受け止める余白が必要です。
壁や床、既存の建具や素材を活かしながら、古道具が主役となるための背景をつくる。
建物も、道具も、役目を終えたものではなく、次の時間を重ねていくものとして捉えました。
建物から、まちへ。受け継ぎ、次へつなぐ場所
かつて八百屋として、地域の日常を支えていた建物は時代とともに役割は変わり、
いま、不動産と古道具を通して、再び地域とつながる場所になろうとしています。
まちの角に生まれた、暮らしの小さな循環の拠点。
九十九道具店は、これからの地域の暮らしと、
まだ見ぬ誰かの「次の使い方」をつないでいきます。
九十九道具店
OUTLINE
| PJ title | くらしの不動産・九十九道具店 |
|---|---|
| Place | 香川県三豊市 |
| Building type | 不動産店舗・古道具店 | 木造平屋建 | 対象床面積84.51㎡ |
| Complete | 2026.03 |
| Director | 関 大樹 |
| Designer | 関 大樹 |
| Construction | 喜田建材 |
| Photo | 合同会社FIZM |



