地域密着型インクルーシブな「かかりつけ薬局」大学薬局さかもと
インクルーシブな薬局として地域に根差す
観音寺市の幹線道路沿い。
セルフメディケーションをサポートし、地域の人々に馴染んでいけるようにとの思いを込めて薬局の計画を始めました。
近年注目されているセルフメディケーションとは、自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること。自ら取り組むものですが、薬剤師はそのサポートをします。
誰でも気軽に相談できるようにとの思いをカタチにしました。
共に計画させていただくことになった隣接する「たかた内科医院」と一体的に感じられるよう景観にも配慮しています。
これまでの白を基調としたドライな印象とは異なり、自然な素材を多く使い、自宅で過ごすような安心感を持てるようにし、訪れる人の不安や恐怖心に寄り添えるようにやさしく包み込むようなデザインです。
不安を癒しに変える空間
出入口正面には、季節を感じることのできる庭があり自然に癒される空間に。
大きく張り出した軒の下は、車椅子利用者や身体的に不自由を抱えた患者さまを想定した緩勾配のスロープ、歩行者と車椅子がすれ違える幅が確保されていてどなたでも気を遣うことなく利用できます。
雨の日には、急いで傘をしまう必要もなく、晴れの日は日陰でのんびり屋外ベンチで迎えの車を待つことも。
規則正しく並んだ列柱、外壁材の杉板、木の手摺など半屋外でも温かみを感じ、どんな時も包み込まれる優しさを感じさせます。
自然素材で心から落ち着く場所へ
お薬を処方される時の待ち時間は意外と長く感じるものです。
これまでの薬局は待合室も白を基調とした清潔感を重視した印象でしたが、「大学薬局さかもと」では、内装仕上げにオークの床、壁と天井はひのき合板など馴染みのある木を多用。不安な気持ちが少しでも和らぐよう安心感を重視した居心地の良い印象に。
門前薬局としての機能だけではなく、近隣の医院の処方箋をお持ちの方も入りやすいように大きな窓を配置し、安心して来局出来るようになっています。外部に向けた大きな窓は自然光で満たされる空間をつくるだけでなく、外で転倒したり、困っている方をすぐに介助できるように考えられています。
誰でも自然に利用できる優しい設計
投薬カウンターは、閉鎖感や圧迫感を感じさせないようにサイズを調整、自然素材の木を使用し安心して説明を受けることが出来るようにしました。座位と立位のスペースを確保することで、車椅子利用者や体調のすぐれない方、子ども連れの方などどんな利用者にも対応出来るように工夫しました。ゆったり座れるソファに、直接お薬をお持ちすることも可能です。
トイレはホテルライクな落ち着いた雰囲気でありつつ、車椅子利用者が一人で自立して、安全に使いやすく移乗できる設計としています。
従来のL型の手摺ではなく、どこでも掴むことができる「テスリックス」は、必要に応じてそれぞれ異なる力の入る箇所をしっかりと掴めて安心安全に利用できます。
作業性を重視した調剤室
いくつもの調剤薬局を見学させていただき、実際に作業されている方々のお話をお伺いし、法律上のことだけではなく使い勝手をしっかりヒアリングしました。
作業面には細かな作業にも差し支えないよう照度を確保し、時代の変化に対応出来るよう今後の機材の変更などにも対応出来るような計画としました。空調の位置も正確な調剤作業が出来るよう配慮しています。
薬を落としても探しやすいように作業台や床面を白色の薬の対比色のダークカラーにしました。
床材は天然素材から作られているリノリウムを採用。リノリウムは、抗菌性や抗ウイルス性があり安全性が高く、環境に配慮したサステナブルな素材です。
地域の人の「あったらイイな!」
全てを優しく包み込むインクルーシブなかかりつけ薬局として、センシティブな状態でも安心して来局し、気軽に相談出来る場所。
「あったらイイな!」を感じる薬局として地域の人々に愛され続けていきますように。
OUTLINE
PJ title | 大学薬局さかもと |
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Place | 香川県観音寺市坂本町四丁目1番6号 |
Building type | 店舗 | 木造二階建 |96.33㎡ |
Complete | 2023.05 |
Director | 平宅 正人 |
Designer | 平宅 正人 |
Construction | 建築屋 |
Photo | 合同会社Fizm(藤岡 優) |