ファブリック漂う劇場形レンタルスペース絶景劇場
遊休空間をクリエイティブに収益化する
高松市の臨海部を一望する、かつて国民宿舎だった「栗林山荘」。高度経済成長期に建てられた鉄筋コンクリート造の施設は、建設当初、エントランスエリアに客室を設ける計画が途中でとりやめとなったようで、これまで大きな空間が未利用のまま残されて物置として利用されていました。
今回、事業継承を機にこれまでの主たる事業である宿泊事業および宴会等の場所及び食事提供の事業を継続しつつ、新たに未利用部分を収益化することになり、どのような事業が望ましいのか、企画からスタートしました。
約200㎡ほどもある大きなガランドウの空間は、コンクリート躯体が剥き出しとなった迫力があり、高松市街を一望する絶景に面している場所。
レンタルオフィスやシェアオフィスなども検討に上がりましたが、情報インフラや電気や空調、消防設備といった多くの投資が必要であること、またマーケティングにより近年大きなレンタルオフィスの需要も減少していることもあり現実的ではないとの判断に至りました。
その中で、小規模の投資かつ、近年のシェアリングエコノミー需要が高まっている社会的背景から、施設の強みを生かして多様なニーズに応えられる利用方法としてレンタルスペース事業を選択。キーテナントとして田中未知子氏率いる「瀬戸内サーカスファクトリー」が主催するサーカスアクティビティを利用した体操教室「リバティキッズジム」が参画することも決まりました。
大きな空間をニーズによってフレキシブルに分割するアイデアとして、施設をサーカスの円形劇場に見立てた利用者のクリエイティビティを刺激する幻想的なファブリックによる間仕切りを採用し、「絶景劇場」と名付けました。
着想はサーカスの円形劇場
絶景劇場は、整形な空間を弧を描いて分割される空間は、さながら劇場のよう。フレキシブルに空間を分割して利用しながらも、ゆるやかに空間を分割するため絶景に面する光景は分割されないように計画しました。
ファブリックは通常のカーテンレールを用いて、それぞれ分割されたものを吊るしているので、様々な使い方に対して掛け方を変えるだけで空間の印象を一変させます。
「瀬戸内おとぎ話」浮遊する幻想的な装置としてのファブリック
ファブリックの制作は、東京杉並区の西荻窪を拠点として活動するファブリック作家 Ayane Kakuさん。Ayaneさんが来香してフィールドワークをした中でインスパイアされた光景を「瀬戸内おとぎ話」をコンセプトに色とりどりのチャーミングなモチーフでパッチワークして制作しています。
OUTLINE
PJ title | 絶景劇場 |
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Place | 香川県高松市 |
Building type | レンタルスペース | 鉄筋コンクリート造5階建 | 対称面積212㎡ |
Complete | 2020.10 |
Director | 平宅正人 |
Designer | 平宅正人 |
Construction | 彩工舎 |
Photo | 藤岡 優 |