にぎやかなガランドウmerry house
受け継がれてきた家を、新築で残す
善通寺の参道沿いに明治時代から建つ家をお持ちだった西坂さんは、祖母、ご夫婦、小学生2人の3世代家族。当初は、慣れ親しんできた家への愛着や70坪にもなる大空間が気に入っていたため、建物は残し、耐震性の強化と今の暮らしに合うよう、間取りの改善をしたいと相談を受けました。
西坂さんの日々の生活を丁寧にヒアリングしながら丁寧にプランを計画し、耐震診断をしながら補強の見直しをしてきました。けれどもコストが合わず、リノベーションを断念。既存の建物は解体し、新しく家を建てることになりました。
新しい家に長年親しんできた家の趣を残すよう、今まで使われてきた建具を新居に再利用することに。高さ・幅を調整してリメイクし、リビングと玄関を仕切る建具として使用しました。昔の面影を残した古建具があることで、今まで使われてきた家具達も新しい空間になじみ、やわらかい雰囲気にしてくれます。
「2階の窓から見える善通寺の五重塔が気に入っているんです」
建物が完成し、内覧会の日にそう語る西坂さん。
善通寺市は、弘法大師・空海の生まれ故郷である。生まれ育った讃岐の地に自ら善通寺を創建。善通寺の五重塔は市のシンボルとして、多くの方々に親しまれています。
そんな昔から慣れ親しんできた五重塔が見える、お気に入り空間のある家となりました。
大屋根の下に広がる、にぎやかな空間
週末に友人を招いてBBQをすることや、親戚の方々が集まることが多く、たくさんの人で賑わう西坂家。西坂さんのおおらかな性格と大きな屋根の下のガランドウが、集まったみんなをあたたかく迎え入れます。
大きく張り出した軒下には、4.5畳の香川県産のヒノキ材が敷かれたデッキポーチがあり、BBQを楽しみます。ポーチの横には土間で出来た納戸を設けているため、BBQの準備、後片付けもスムーズに。家の中が汚れる心配もありません。
玄関ドアの横には、デッキとひと続きの大きな窓を設置。大人数でもスムーズに出入りが出来ます。
ホールからリメイクされた古建具を抜けると、最も高いところで5mにもなる勾配天井のリビング・ダイニングが。ダイニングに向かって作られたペニンシュラ型キッチンや2階に上がるオープンな木製階段、吹き抜けからのぞいて見える2階の廊下と、あちこちから声が届き、ガランドウがにぎわいます。
無口だけど表情豊かな和室。
リビングにだって寝室にだってなれるんです。
リビングに潜り込むように、障子で仕切られた部屋が。開けると奥には仏間を備え付けた和室があります。
障子を全開にすると、リビングと一体となり広々とした空間に。法事や友人との集まりで多くの方々がいらっしゃっても、ゆったりとくつろげます。
畳は、天然樹脂を含んだ複合素材の美草のスタイロ畳を採用。水や汚れに強いため、万が一食事をこぼしても水で拭き取れます。障子は、和紙を樹脂でラミネートしたワーロンプレートを採用。和紙の質感を残したまま、破れにくく、汚れにくい障子に。普段から来客が多いため、手入れがしやすい和室にしました。壁は和紙貼りに。畳との相性が良く、部屋全体をやわらかい雰囲気にしてくれます。
夕暮れ時に障子を閉めると、西日が障子越しにやわらかく差し込みます。シンプルに仕上げた和室が、表情豊かに静かで落ち着きある空間になります。
布団を敷けば、ゲストルームとして寝泊まりも可能。状況で変化する万能な和室となりました。
たくさんの仲間を招いても大丈夫。
日常動線と両立する、おもてなし動線のある間取り。
友人や親戚など来客が多い西坂家。玄関ホールからリビングに直接アクセス出来るようにし、ホール横には家族で日常使いするものとは別に、手洗いとトイレを設置。おもてなし動線と家事動線が交わらず、プライベートを隠すことが出来るため、急な来客にも困りません。また、ホールに手洗いを設置することで、家に入り、すぐ手洗いが出来るため、感染症拡大防止にも繋がります。
各個室にはリビングを一度通ってから、アクセス出来るようにしました。そうすることで、お互いの様子を確認することが出来ます。閉じこもり過ぎず、プライベートな空間はしっかり。3世代で住む西坂さんの程よい距離感が出来ました。
おもてなし動線と切り離したところに家事動線をつくりました。
洗面脱衣室には、洗濯機、衣類を収納出来るスペース、ハンガーパイプ、屋外物干し場へアクセス出来る勝手口を設けることで、洗濯動線をコンパクトに。コンパクトにまとめることで、おもてなしスペースに洗濯物が出てくることがありません。タモ材の洗面化粧台に、学校や病院などで使用される実験用シンクを使用。平らで広い底面が特徴のシンクは、衣類などが洗いやすく、シンプルなデザインでスッキリ見えます。ダブルシンクにし、朝の支度で混み合う時間も順番待ちをせずスムーズになりました。また、西坂家は仕事柄汚れた服が出やすく、娘さんも運動部に所属しているため、頑固な汚れがついた衣類を浸け置きするのにも重宝します。
3世代家族に応える、収納も作業場もたっぷりの台所。
5人でお住まいの西坂さん。日常で使う食器の数が多いだけではなく、5人分の料理をつくるとなると使用する調理器具も大きくなります。さらに学校生活で必要な弁当箱や水筒など、それぞれに居場所をつくるよう、丁寧にヒアリングしながら収納たっぷりのオリジナルキッチンとバックキャビネットを制作しました。
キッチンは、ペニンシュラ型を採用にすることで、料理をしながらリビングの様子が見られ、家族や来客者とコミュニケーションをとりやすくしました。
キッチンの奥行きを80センチとることで、出来た料理を並べながら作業出来る、ゆったりとしたスペースを確保。来客が多くてもストレスなく料理が出来ます。80センチもあれば、ダイニング側にも収納スペースをつくることができ、来客用のコップが多くてもしっかり収まります。祖母と奥さんで2人で作業することがあるため、通路幅は1メートルほど設けました。
キャビネットは指紋などが気にならない、ステンレスのバイブレーションのワークトップに、赤みが入った洋桜の突板の面材をまわしました。リビングに馴染むよう、品良くあたたかみのある仕上がりにしています。
また、キッチン横にある2畳のパントリーには、大人数集まったときに使用する大皿など日常使いしないものも置くことが出来ます。また、パントリーに勝手口を設け、屋外のゴミ捨て場をつくることで、生活のゴミを一時的に置けるようにしました。表の通りからは見えないように木塀を設置し、外からの視線をさえぎります。
リビングと寝室とそれからトイレ、
みんなちがって、みんないい
家族で過ごすLDKの床には、香りが良い香川県産のヒノキを敷き詰めました。
壁は明るいグレーの壁紙を。単調で、だだっ広い空間にならないよう、リビングの奥に見える壁には、祖母の後押しもあり、セメントのような素材感を持つSOLIDO(ソリド)をアクセントとして採用しました。リビングには洋桜のキッチンや古建具、張り出した和室の障子など、様々な要素が入り込むため、一つ一つの素材はシンプルにアクセントとなるよう、上品な仕上がりを選び、全体をまとめました。
リビングからひとつ扉を開くごとに、個性あふれる空間が。寝室からトイレまで各部屋の仕上げを、ご家族みんなで選んでいきました。
若草色の壁紙がお気に入りの祖母の部屋は、
織り目調の壁紙にすると全面に使用しても、柔らかい印象に。和の雰囲気も出るため、ヴィンテージの洋服箪笥が馴染みます。
ご夫婦の部屋は、
柄を入れたいけれど、冒険するのには勇気がいる奥さん。薄ピンクがベースの抽象的で大柄な花の壁紙をアクセントに採用。赤みが入ったグレーの壁紙を組み合わせ、清楚でさりげなく華やかな空間となりました。
ピンクの壁紙を使いたい姉の部屋は、
こどもっぽくならないか懸念していたため、ピンクの壁紙と抽象的な柄の壁紙をペールトーンでまとめることで、子どもっぽさの抜けた可憐な仕上がりに。
トイストーリー好きの妹の部屋は、
鮮やかなえんじ色の壁紙と落ち着いた紺色の柄の壁紙を組み合わせた部屋に。トイストーリのグッズも馴染み、映画に出てきそうな部屋となりました。
来客が使用することが多いトイレは、
花柄の中に海洋生物が隠れたアンティーク調の個性的な柄の壁紙を使用。ボルドーの壁紙と合わせ、優雅な空間に。来客をディープな世界に連れて行ってくれます。
窓がない、家族がメインで使うトイレは、
羽柄の壁紙を壁全面に使用。大柄で上品なデザインを選んでいるため、うるさくなくエレガントに。白ベースの柄を使用し、明るい空間になるようにしました。
洗面脱衣室は、
濃紺の天井に、青みが入った明るいグレーの壁紙を組み合わせました。清楚感があり、さわやかに洗濯が出来ます。
それぞれの部屋にセンスとアイデアが詰め込まれています。
そうだ、なかったらつくっちゃおう。
オリジナルフォントで飾る表札
音楽プロデューサーのAviciiがお好きという旦那さんへ、オリジナルフォントをしわく堂からプレゼント。オリジナリティーある“NISHISAKA”フォントが掘り込まれた表札が、友人たちをお迎えします。
OUTLINE
PJ title | merry house |
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Place | 香川県善通寺市 |
Building type | 個人邸 | 木造2階建 | 延床面積 166.18㎡ |
Complete | 2021.12 |
Director | 平宅正人 |
Designer | 平宅正人 |
Construction | 入江木材 |
Photo | 藤岡優 |