田んぼの中のお豆腐スタンドとうふのお店 カンショク
柞田川の伏流水と共に育ってきた豆腐店
株式会社カンショクは、香川県観音寺市の近傍に柞田川が流れる、田んぼに囲まれたのどかな場所で昭和23年の創業時から変わらず豆腐を作り続けてきた老舗豆腐店。
はるか昔から田畑や瀬戸内海を潤し、人々の健康を育んできたこの地で得られる柞田川水系の豊富で清らかな「伏流水」には、豆腐づくりの大敵となる「鉄分」や「マ ンガン」がほとんど含まれておらず、厳格な水質管理・検査を行いながら、大豆を浸けることからはじまり豆腐を包む水まで日々、製造に利用しています。
以前は屋号を「観音寺食品」としていましたが、地域では「カンショクさん」と親しまれ、平成元年に屋号を改称しました。
お客さまとのHello!をつなぐ場所
これまでスーパー等の小売店や給食事業者などBtoBの顧客との取引を主としてきた同社ですが、近年は直接お客さまの声を商品の製造・開発に活かそうとマルシェ等のイベント出店も積極的に実施しており、新事務所棟の整備にあたってお客様との直接の接点をもつ直売所を併設する計画を立てていました。
「こんにちは、お客さま。」「はじめまして、新商品です」
顧客との接点を作る場所は、たくさんの「Hello!をつなぐ場所」です。そこで、「Hello カンショク」をキャッチコピーに「Hello」を紡ぐ活動を展開できる場として整備するため、新社屋には豆腐本来の旨みや作りたての商品の魅力を味わってもらうための直売所「とうふのお店 カンショク」と、お客さまの声を反映して新商品の開発を行うための通りに面してOPENな構えをとったテストキッチン付きの「とうふラボ」を設置しました。
田んぼの中のお豆腐スタンド
豆腐は毎日の食卓に並ぶ親しみのある食材。
だからこそ、利用するお客さまにとっても、働く人たちにとっても素朴で親しみやすさを感じてもらえる施設のデザインを目指しました。
デザインイメージの着想は 田園風景に面したコーヒーなどのスタンド型店舗。田園に近接した小さな通りに面しているため、威圧的な規模にならず、かつ親しみやすく柔らかい印象をつくるために、建物のボリュームを2棟に分けて屋根の高さを低層に抑え、三角屋根のピークに丸みを持たせた棟を乗せました。
建物は外観・内観ともに豆腐のもつ清潔感と柔らかい印象を感じさせるように、全体を白とナチュラルな素地の木の表情を使ってシンプルにまとめ、直売所前はロゴをあしらったオーニングをゆったりと張り出してお客様をお迎えするようにしています。
当日製造のみの各種大豆加工品を取り揃える直売所は、隣接した製造工場からの商品の搬入や清掃性・耐久性の良い材料を用いてデザインしています。親しみやすく気軽に店内へ足を運びやすいように、大きなガラスを用いて店内を見通せるオープンなつくりで、レジ前にはかつて、出張先で手売りで豆腐を販売していた屋台で用いていた暖簾を復刻制作して取り付けています。
店内には、カンショクの豆腐づくりへのポリシーを伝えるグラフィックを掲示し、これらの前に「工場出荷の出来立て」商品がずらりと並びます。
「とうふラボ」は、大きなガラス窓を開けて外部からも出入りできるようにしていて、豆腐教室の開催するほか、日常的にはミーティングスペースとして利用し、製造する人々の姿を視認できる環境を作ることで、より豆腐製造に対して顧客へ親しみを頂いてもらえるように意図しています。
「まいにち、だいず」で暮らしに笑顔を。
新事務所・直売所の建設にあわせて企業ロゴもリニューアル。
カンショクがこれまで大切にしてきた柞田川の伏流水の恵みと大豆タンパクの恵みから着想を得て制作。湧き出す伏流水のイキイキとした水の力強さを想起させる青をコーポレートカラーとして選定し、カンショクの創業者で、「ばあばん」と親しまれている秋山ツヤノ氏から受け継いだ柔軟で柔らかな気風を愛らしいツヤのある大豆のシルエットとを組み合わせて表現しています。
内部のサインについても、豆腐型の柔らかいフォルムの照明器具にピクトグラムをあしらった室名表示を採用しました。
隣接する工場と連携する機能的なレイアウト
通りを挟んで隣接する食品工場とオフィスは、伝票のやり取りや出荷・納品と、朝から夜中まで、多くのスタッフや資材等が行ったり来たりします。オフィスは工場側からのアクセスができるほか、中央に通り抜けできる廊下を作ることで、フレキシブルなコミュニケーションができる環境づくりをしています。
OUTLINE
PJ title | 田んぼの中のお豆腐スタンド カンショク |
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Place | 香川県観音寺市 |
Building type | 木造2階建 |
Complete | 2021.10 |
Director | 平宅正人 |
Designer | 平宅正人 |
Construction | しわく堂 |
Photo | 藤岡 優/FIZM |