UPCYCLE off-the- READYMADECode Manish
内覧数は10件超。ライフスタイルを叶える物件を求めて。
医療系のお仕事をされている伊藤さんご夫婦。
初めてお会いしたのは、2人目のお子さんが生まれ、家族4人での暮らしがはじまったばかりの頃でした。
しわく堂クリエイティブディレクター平宅の自邸「ブンカノーカ」での食事会がきっかけで、「中古物件をリノベーションして暮らしたいと考えていて、マンションの売物件を探している」とお聞きました。
ご夫婦の描いているライフスタイルを伺うと、「のびのびと」「グリーンにも興味がある」「子どもも楽しんで遊べるような」といったキーワードが出てきたので、マンションのように隣戸や上下階にも気を配る必要の少ない中古戸建物件のリノベーションをご提案しました。
一般的にリノベーションを前提とした物件探しは、資金計画に関わる「物件価格と建物の状態のバランス」の見極めや「ライフスタイルに叶う間取りのできるのか」という技術的な判断が必要で、クライアントだけで探すことは簡単ではありません。
今回は物件探しからしわく堂でお手伝いできたので、一緒に物件を巡りプランを考えながら探すことができました。
伊藤さんと一緒に香川県の中讃エリアを中心に10件を超える内覧をして見つけたのは、昭和50年代に建てられたコンパクトな2階建ての規格建売住宅。
小学校からもほど近く、近隣には宅地分譲地に新築住宅も建ちはじめていて「同世代の子どもの友達もできそうだ」というのが決め手になりました。
「レディメイド」を「アップサイクル」
伊藤さんご家族の住まいは、スタンプを押したように同じ形状の住宅が反転して建ちならぶ住宅地の「角地」にあります。
かつて時代の要請に応えて建築された「レディメイド」の住宅を、いかに「現代の」そして「伊藤さんご家族らしい」ライフスタイルの暮らしの舞台に「アップサイクル」するのかがテーマです。
道路に面してぐるりと囲むかたちで築かれていた敷地内への石垣やブロック塀を取りのぞいて、庭の植栽スペースを取りつつ、3台分の駐車スペースを確保。
子ども達の遊び場にもなる大きなウッドデッキは安全性とLDKのプライバシーを考慮して、板塀で囲んでクローズドにしつつも、玄関前は小さな庭を撤去してインナーテラスのような大きな軒下空間をもったポーチを増築して伊藤家らしさがにじみでる場所を設けました。
近未来には植物も育ち、子ども達の自転車や遊び道具が並んだにぎやかな玄関構えになりそうです。
住まいの外観も一新。
大きな窓を新しくあけて、瓦をガルバリウム鋼板で葺きかえ。
外壁も既存の壁をカバーする工法で白いガルバリウム鋼板で仕上げ、玄関前は黒塗装した杉板でアクセントをつけています。
「MANISH」なリノベーション
音楽、ファッション共に「R&B」や「HIPHOP」が好きな旦那さんと、モノトーンを基調とした「MANISH」なファッションが好みの奥さん。
2人共が共通してイメージしていた内外観のテイストはスタイリッシュかつモノトーンでベースに「くすみカラー」を取り入れたまさに「MANISH」なデザインで、リノベーションの醍醐味である本の構造躯体の柱や梁をあらわにしたダイナミックな空間と「いい塩梅」で融合した住まいに仕上がりました。
黒杉に金色の取手が映える扉を抜けると、靴と一緒に子どもの乗り物も並ぶゆとりのある玄関へ。
靴持ちな伊藤家でもたっぷり収納できる靴箱には、ご家族の靴がにぎやかに並びます。
奥へ進むと、たっぷりと光が差し込むリビングに到着。
枠を大きく広げた窓からは気持ちの良い風が入り、螺旋階段を抜けて子ども部屋まで流れてゆきます。
14畳の小さなLDKだけど、天井の高さを上げたり、ワンルーム的に各スペースに視線が抜ける工夫を凝らし、開放的な空間に。
窓が道路に面していても、ウッドデッキがあることで日中はカーテンを開けて、光をめいっぱいに取り入れたLDKでのびのびと過ごせます。
2.8mもの天井の広がりは、リビングにのびやかな開放感を与え、ヒノキを敷き詰めた床に思わず子どもと寝転がりたくなります。
見上げた天井には黒い梁が走り、程よくクールな雰囲気に引き締めてくれます。
天井塗装は、伊藤さんのお父さんの助太刀もありながら自らの手で塗りあげ、より愛着の湧くリビングになりました。
キッチンは丁寧なヒアリングのもと、別々に料理する2人それぞれの使いやすさを考慮したオリジナルデザイン。
1つ1つサイズを確かめて設計しているので引き出しに調味量や鍋・フライパン、炊飯器がすっぽり収まります。
生活感が出やすい冷蔵庫やパントリー、ゴミ箱は奥にまとめて収納することでスッキリ。
濃淡あるイタリア製の白タイルは照明や、外から差し込む光の加減によって変化に富む表情を魅せてくれます。
キッチン・床タイルはグレーでまとめ、明るすぎない印象に。
いつも奥様がお化粧に使っている洗面所は直径60cmもの円形鏡とレセップライトで、いつもと一味変わったメイク時間を演出。
さながらハリウッドスターのような気分を味わえるパウダールームは、日常に華やぎを与えてくれます。
トイレもアンダーなモスグリーンと白を上下で貼り分けて、「MANISH」らしく仕上げました。
これからも家族に寄り添う住まい
螺旋階段の奥には、マスタードイエローのカーペットが敷き詰められた子ども達のプレイルームや収納スペースが設けられています。
一角には物干し竿が隣接しているので家事をしながら子どもを見守ったり、取り込んだ洗濯物を収納しやすい家事動線。
ベンチキャビネットはおもちゃ置き場や腰掛けとしても機能し、子どもを中心に家族の笑い声が響きます。
今は2階が家族みんなの寝室ですが、ゆくゆくは育った子ども達2人の個室となり、子ども部屋が夫婦の寝室になることを踏まえた間取りに。
好きなファッションのスタイルから着想した、伊藤さんご家族らしいリノベーションになりました。
子ども達の成長と共に育ってゆく、これからの住まいも楽しみです。
OUTLINE
PJ title | UPCYCLE off-the- READYMADE -Code Manish- |
---|---|
Place | 香川県丸亀市 |
Building type | 個人邸 | 木造2階建 | 延床面積 81.98㎡ |
Complete | 2022.4 |
Director | 平宅正人 |
Designer | 平宅正人 |
Construction | 山口工務店 |
Photo | 藤岡優 |