薪火グリル付きゲストハウス 焚べる、食べる、しゃべるが繋がる ku;bel
「1度来たら満足する場所」から「何度も来たくなる場所」へ
地域と旅行者を共感の輪でつなげる食堂型ゲストハウス
着想は、浪越弘行氏がスペインで出逢った会員制の食堂「美食倶楽部」。そこでは趣味や嗜好に共通 点のある人々が、自分たちで料理をし、集まって食事を楽しみながら交流を深める印象的な光景を目 の当たりにしました。近年、父母ヶ浜をきっかけに急速に観光地化する一方、オーバーツーリズムな どの課題も見えてきた三豊市において、「美食倶楽部」のような体験を「食堂型ゲストハウス」とし て料理人である自身も関わって地域の方々やゲストと共有することで、地域の方々には旅行者との楽 しいコミュニケーションを、旅行者にとっては濃密で得難い何度でも足を運びたい第二の故郷のよう な体験を提供することができると感じ「ku;bel」プロジェクトはスタートしました。
薪を焚べて炎を囲み、共感できる人たちと時間と食卓を共有する。
食を中心としたプリミティブで濃密な滞在体験型ゲストハウス。
浪越氏が「美食倶楽部」に着想を得たゲストハウス構想の中で中心に据えたのは、太古から人間 が親しんできた薪を焚べて起こした炎。これまでも料理人として燧灘の海水を薪で煮詰めて塩を つくったり、cafe de flotsに置かれた薪ストーブのまわりに集まる人々の姿を通して、炎を囲む空 間に秘められた魅力が、濃密なコミュニケーションを生む重要な役割を担っていることに着目 し、薪を焚べて調理を行う「薪火グリル」と本格的な厨房設備を備えたキッチンスペースとロン グテーブルを囲む食卓スペースのある調理から食事・団欒までを楽しむ食に特化したゲストハウス を整備。施設名は「焚べる」「食べる」「しゃべる」をつなげて「ku;bel」と名付けました。
時間を共有する、みんなで囲むキッチン
キッチンはゲストがホストである料理人 浪越さんと料理を楽しめるように大きなシンク付きの作業台を囲めるようになっています。
ワークトップはイタリア漆喰磨きの上に、ガラスコーティングをしています。
回転滑車式の薪火グリルや薪火オーブンは、要望をお聞きしてオリジナルで制作しました。
団欒が待っている大きな食卓
キッチンの隣は大きな吹き抜けに面したダイニングエリア。全ての宿泊室はこのダイニングを囲むようにつくられています。
長い木製のロングテーブルが並んでいて、ゲストみんなで囲む食卓は話が弾んで、薪ストーブの暖かい火の揺らめきもあいまってドラマティックに夜が更けていきます。
宿泊室は1階に2名用の個室が2室と、2階のロフトエリアにバンクベッドを含めて9ベッド用意されています。
天然のリネンを使ったベッドは巣篭もり感があって、落ち着いたインテリアに。
浴室はシンプルに白で統一された独立式の浴槽を置いていて、どこか外国のホステルのよう。
インテリアの備品や小物に、自然派な浪越さんの感性が散りばめられた、優しくてでもプリミティブで雄々しい雰囲気が醸し出されています。
OUTLINE
PJ title | ku;bel |
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Place | 香川県三豊市 |
Building type | 簡易宿所 |
Complete | 2020.4 |
Director | 平宅 正人 |
Designer | 平宅 正人、入谷洋平 |
Construction | しわく堂 |
Photo | 藤岡 優 |